人形劇団「ひとみ座」70周年記念公演『どろろ』
真っ直ぐな熱い少年漫画を感じさせる舞台。
1948年発足、代表作は『ひょっこりひょうたん島』
子供を対象にした作品やシェイクスピア作品など幅広い作品を上演し、伝統人形の研究と継承を活動の柱としている老舗の人形劇団「ひとみ座」で2019年3月に公演された本作は50体以上の人形を駆使し、31名の役者さんが登壇する大掛かりなもので、見どころ盛り沢山な楽しい舞台であった。
人形劇ならではの演出、仕掛けも凝っており、
「百鬼丸」の体は当初、痛ましいほどにボロボロだが、妖怪と戦って取り戻す度にきれいに成っていく。これは人形劇ならではの演出で、その「百鬼丸」人形の痛ましい身体性が、体を取り戻した時の喜びの表現と相まって強い印象を残す。
また、劇中のモブの村人たちは演者が仮面をつけて演じ、侍に切り殺されると村人は仮面のみ残して消える。死の表現としてグロテスクにならずに余韻を残して効果的で、面白い演出だったと思う。
また、近年は舞台上で人形の操作時も演者は姿を隠さない、とインタビューにあったが、舞台が狭く感じられるほどの人の気配は、名のない民衆の多くがこの舞台に生きていることを感じさせ、『どろろ』の第三の主人公「虐げられた民衆」を強く印象付ける。
この多くの「名もなき百姓」たちを感じさせる演出は最後の怒涛の展開への布石の様に思え、旧アニメ主題歌の胸が熱くなる合唱で締めくくられるこの舞台は『どろろ』ファンなら必見。
「どろろの核にある人間になるためのドラマ」を繊細に描きたいという劇団の高い志が結実した良作。