『小説・どろろ』 戦乱妖怪ヤング 辻真先:著 北野英明:挿絵
発行:朝日ソノラマ 1969年
( 1978年に文庫版・2007年に映画公開に合わせて復刻出版 )
旧・アニメ脚本を担当した辻真先先生によるノベライズ。挿絵はアニメで原画を担当した北野英明氏。旧・アニメ放映時とほぼ同時に執筆され、内容・画ともに旧アニメに近く、ジュブナイルである為テンポが良く読みやすい。
【 復刻版・小説 どろろ 】の「あとがき」で、
《 予定より早くアニメの放映が終わることになって、オンエア中に本を出したい編集部から嵐の催促がきた。そんなこといわれても、肝心の手塚原作がどんな幕切れになるかわからない。だがわかってから書いたのでは、絶対間に合わないことだけはわかっていた。えい、やっちまえ。というわけで、予定調和だがどんな形で原作が終わっても、まあ誤魔化しがきく。そんな方法論で纏め上げたのだけれど … 》
と、辻真先先生が語ったように、この『小説・どろろ』は原作・旧アニメ終了前に出版されたために原作とは違う点がいくつかあります。
以下、ネタバレありで違いを上げると、
・肉体を取り戻す順序が異なる。
・「ばんもんの巻」で多宝丸が死なない。
・みおが「妖刀の巻」に登場。
・しらぬいが登場しない。
・オリジナルの妖怪登場。
・どろろが男の子。
最後の違いは、大きい様な気が …
辻真先先生も北野先生も原作を読んで「それはないですよ、手塚先生っ」
となったそうですが、 心中お察し致します。
また、1969年版には「差別につながりかねない表現がある」として、2007年復刻版ではその箇所が改訂されました。
『小説・どろろ』 鳥海尽三:著 表紙切り絵:百鬼丸 ( 渡辺文昭 )
発行:学習研究社
2001年7月「百鬼丸誕生」9月「妖刀乱舞」11月「崩壊大魔城」と全3巻で刊行。
手塚先生が御存命時に著者の鳥海氏がノベライズの許可を得て上梓された小説、著者は虫プロ文芸部に在籍されていた鳥海尽三氏。
【 あらすじ 】
鞍馬に住む明国帰りの医術師・寿海が薬草を採集中に物の怪に襲われる。その時、川上から漂着した赤子を拾う。磐座大明神の加護で難を逃れた寿海は、生まれながらに四肢を欠損した赤子に医術を施す。鞍馬の山中で寿海と家僕の作蔵に育てられた百鬼丸は修行によって念導力を身に付ける。ある夜、夢に現れた魔像に出生の秘密を告げられた百鬼丸は父を探す為、魔像との闘いを決意し旅立つ。
・《 コミック原作の許可を得る時、先生は百鬼丸をサイボーグで扱うようにと指示されたが、わたしもそのつもりでいた。社会福祉上の配慮からである 》とあとがきにあり、この小説内では百鬼丸は魔像を倒しても身体を取り戻さない。
・百鬼丸の幼名が鬼若。
・琵琶法師の名が「法一」、百鬼丸が琵琶法師から北辰秘鷹剣の技を習得。
・どろろと母の再会。
など、原作の設定を踏襲しつつも、原作とはかなり異なる内容になっています。
あとがきの最後で鳥海氏は番外編としてオリジナルの『小説・どろろ』を書きたいと綴っておられましたが、2008年に氏が鬼籍に入られ番外編は書かれませんでした。
『どろろ』 NAKA雅MURA:著 発行:朝日新聞社 2006年12月
2007年1月公開の実写映画脚本を担当した“NAKA雅MURA”氏による映画のノベライズ、上下巻が同時刊行。
映画のストーリーで割愛された部分を補完した内容になっていますが、シーンやキャラクターが全く異なる部分もあります。
どろろが大人で男装した女性である設定は映画と同じで、百鬼丸とほのかな恋愛感情を伺わせる内容となっています。
辻版は児童・少年少女に向けた “ ジュブナイル ”
鳥海版・NAKA雅MURA版は、オリジナル・活劇要素の多い “ 伝奇時代ファンタジー ” といった感じでしょうか?
『どろろ -DORORO-』アドベンチャーノベル JICC出版局 1988年2月1日発行
鳥海尽三・鈴木良武:著 挿絵 ( 切り絵 ):百鬼丸 ( 渡辺文昭 )
プロローグから読み始め、各シーン最後に記載された番号の次シーンへと読み進める。各シーンに行先を選択するための指示あれば指示に従う。戦闘ではサイコロを振って基本数値を計算、巻末のしおりにチェック項目を記入。
お話は原作準拠ですが、
あとがきで鈴木良武氏が《 執筆してわれわれが面白いと思ったのは、TVだとヒーロー絶対で、うかつに死なせることはできないが、ゲームブックでは、何回も最期を迎えさせることができる点だった 》と語っている様に、
とにかく、二人がしょっちゅう死にます。
それはもうバリエーション豊かに …
ゲームブック「どろろ」は中途半端なエピソードで「完」になるので、販売成績が良ければ続巻が刊行されたのかもしれません。
『どろろ』がゲームブックに選ばれた理由は《 物語の運びそのものが、ゲームブックの素材として格好のうえ、あまたある手塚先生の作品群の中でも、安定した根強い人気を保っているからという理由だった 》
と、鈴木氏があとがきで書いています。
購入時に “ どろろ ” だけ書店のゲームブックコーナーに5~6冊並んでいました、人気作品のゲームブック化なので大量入荷されていたのだと … 思います、多分?