「どろろ」を巡る冒険或いは私的備忘録

「どろろ」の記事を掲載しています。ほぼ、それだけなので、「たわし」しかない雑貨屋状態です。挙句の果てに新アニメの記事は殆どありません。「たわし」といっても亀の子しか置いてないんです、すみません状態です。書いてる本人も如何なものか… と思ってるので、どうか御容赦下さい。

「手塚治虫昆虫図鑑」 

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手塚治虫昆虫図鑑」 手塚治虫・小林準治(解説・構成):著 講談社+α文庫

 「漫画の神様手塚治虫は稀代の昆虫好きだった。その膨大な作品群の中から、あるときはリアルに、またあるときは漫画的に昆虫が登場してくる140作品をセレクト。昆虫を通して、手塚ワールドの新たな魅力を発掘します」 -BOOKデータベースより

 手塚作品を昆虫という切り口でまとめた一冊。

どろろ」もいくつか取り上げられているのでご紹介します。

 

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 マイマイオンバのモデルとなったドクガ科の「マイマイガ

 

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 どろろの昆虫食、トノサマバッタ?を焼いてどろろが食べているシーン。

 

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琵琶法師が仕込み杖で蠅を一刀両断する場面。

主役はハエでは無いのですが、

『ハエの翅の付け根をよく見ると、細く棒状にくびれ、平均棍が描かれている。これが、ハエを描くうえで最も肝要な部分で、ハエの一番の特徴なのだ』

と、紹介された正確な描写に手塚先生のこだわりが感じられます。

 

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どろろ助六と「ミノムシ」の様にぶら下がる場面。

地味な虫である「蓑虫」は手塚作品でも登場が少なく、登場してもミノムシモドキ、ギャグカットと紹介されていますが、

 

 枕草子・第41段

『蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、親のあやしき衣引き着せて「いま秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ」といひおきて、逃げて住にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになりぬれば「ちちよ、ちちよ」とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり』

『蓑虫はとても趣深く感じる。鬼の(生んだ)子なので、親に似て恐ろしい心を持つだろうと、(親が)粗末な衣装を着せて「秋風が吹くころに来るので、それまで待っておれ」と言いおいて去ったことも知らず、風の音を聞き知って、八月になると「父よ、父よ(あるいは乳よ)」と心細く鳴くのは、しみじみと不憫で趣き深い』

 

「蓑虫の声を聞きに来よ 草の庵」

と、芭蕉の俳句が有名ですが「蓑虫」は秋の季語で、多くの俳人歌人が題材にしており、「蓑虫」の異名「鬼の子」「鬼の捨子」、こちらもよく題材になっています。

 

 蓑は異界との往復の装備で、祭りの来訪神は蓑をまとっていることが多く、秋田のナマハゲも蓑を装備して現れる。

 

と「ミノムシ」に関するアレコレを列挙してみると、どろろ助六の浮浪児二人がミノムシ(鬼の捨て子)の恰好をしているのも偶然では無く、なんらかの暗喩があるのではないかと考えてしまいますね。

 

 また、手塚作品では「虫」「植物」「鳥」で季節の変化を表していることも多く、

手塚治虫文庫・どろろ(P17)」でツバメが子育て中、(P61)でマルハナバチ(?)が描かれているのを見ると、アニキは5月中頃~6月下旬生まれの様ですね、牡牛座かふたご座? 

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 手塚治“虫”作品では「虫」が作品世界の暗喩、象徴に使われていることが多く、読書のお供にこの一冊を添えることで、より深く手塚ワールドに浸れるので、おすすめしておきます。架空の昆虫も含めて適当な描写が無く、特に先生がこよなく愛した「チョウ目鱗翅目」の章は充実していて楽しいです。

 

 本書のP226・オオホシオナガバチ

『「人間昆虫記」の主役、十村十枝子の生き方を見ると、ここにヒメバチを登場させたのは、さもありなんと思わせる。手塚治虫だけが持つセンスを感じさせる、恐ろしい象徴である』

は、本書を読むまで気が付かなかったけれど、気が付くとゾクゾクする、象徴的な暗喩でした。小さくて地味なハチなのですが、その華奢なシルエットが女性的で寄生と言う習性とともに印象的な昆虫ですね。