【昆虫つれづれ草 著:手塚治虫 小学館・Lapita books】
ー手塚治虫、虫の博物誌ー
『昆虫つれづれ草』は手塚先生が旧制中学時代、御学友と一緒に昆虫についての小論をまとめて発行していた小冊子で、装丁・挿画、構成の巧みさとこだわりも凄いのですが、先生の早熟な文才と当時の ( 旧 制 ) 中学生の教養の高さに驚かされます。
天才は早熟だと言いますが、これを1~2週間で清書、装丁・製本までやって仕上げていたそうなので、いやはや天才とは本当に恐ろしい ( 栴檀は双葉より芳しというやつでしょうか ) 漫画は「インセクター」と「ゼフィルス」の二編が収録。
また、巻末に先生の旧制北野中学時代の同級生「林久男」さんインタビューが掲載。40数年ぶりに偶然書庫から発見された経緯、戦時下の記録も含めて、読みどころも多く、少年手塚治虫のみずみずしい感性に驚嘆せずにはいられません。
序盤の「昆虫と神話」で記紀神話に登場する昆虫について論じたり、引用される文献も神話・古典・民話と多岐に渡っていて、手塚作品の豊かな物語のしっかりした土台はこの辺りにあるのでしょう。
amazonで安価になっていたので、虫が苦手じゃない方にはお勧めしておきます。( 2021年3月現在 )
関西キー局で再放送された『手塚治虫』特集番組で拝見したのだと思うのですが、この林久男氏が、インタビューで、
「手塚君に心酔している友人がいて、いつも3~4人で遊んでいた」
「手塚君は女の子によく構われていた」
と、当時の思い出を語っておられて、
これを聞いて思い出したのがNHKの手塚治虫 ( 追悼?) 特集番組。
「同窓会で『この○○に登場するキャラクターの名前は私 ( の旧姓 ) でしょう? 珍しい名前だから偶然じゃないよね』 って手塚君に絡んで困らせちゃった、うふふ……」
と、インタビューを受けて「手塚治虫」との思い出を語っていた上品なおばさま。
手塚先生、小・中学生時代にモテていたのでは?
ご本人の自覚は無かったと思いますが、
先生の昔の写真を見ていても思うのですけれども、こんな小柄で可愛くて頭良くて面白いことを思いつく、ちょっと気弱な男子が居たら女子は構っちゃうと思うんですよ。
モテモテとか、憧れの的とか、きゃーきゃー言われたじゃなくて、
「構われていた」
と、言うのが先生には申し訳ないのですが、
微笑ましくていいなあ、
と、
思う所存で御座います。