【 手塚治虫WORLD - 少年マンガ編、これがホントの最終回だ!】
発行:ゴマブックス株式会社 著者:手塚治虫 監修・文:みなもと太郎
手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『リボンの騎士』『どろろ』『ジャングル大帝』『W3』の6作品の雑誌初出時のオリジナル最終回を掲載、漫画家のみなもと太郎氏が解説する一冊。
『鉄腕アトム』では「少年」の最終回の後「別冊少年マガジン」に掲載された外伝的な最終回「アトム今昔物語」小学館の「小学2年生」に掲載されたストーリーなどを多彩に取り上げ、『W3』では当時事件の発端となった『宇宙少年ソラン』の漫画を担当された宮腰義勝氏のコメントも紹介されていて、これはなかなか貴重な証言? また初出と現在購入可能な書籍も掲載されていて親切設計。漫画家であり、マンガ研究家としても活躍される「みなもと太郎」氏の博覧強記な解説が魅力の一冊です。
『どろろ』は「ぬえの巻・後半」が収録されています。
みなもと氏の『どろろ』解説に由れば、
『光』『どろろ』『ブラック・ジャック』の人物設定 ( ちょっとニヒルな主人公にまとわりつく少女という配置、凸凹コンビの面白さ ) が酷似していて、これら三作品は奇妙な三角関係にある。
とのこと、
これに関しては、三角関係がもう一つあるような気がします。
これらの三作品は親子の関係性が感じられる作品だな、と以前から思っていまして、ピノコが長女のるみ子氏に似ているのは、あちこちで良く指摘されていますが、チョコラは手塚家の次女様に似ていると思いませんか?
まあ、私見になるのでアレですが、
とすると、しっくりくる気がするのです。
手塚先生が『ドン・ドラキュラ』は『ブラック・ジャック』のパスティーシュと語っておられたのも、
「ピノコ、せんせいのおくたんよのさ ( お父さんのお嫁さんになるの )」
から、
「チョコラ、わしを見捨てないでくれ」
父はどんどんおじさんになり、娘は成長し、そんな娘を見てお父さんは ー
という構図です。
百鬼丸が少年期、BJが青年期、ドンドラキュラが中年以降と考えると面白いんですよ。「身体がバラバラ」になった時に百鬼丸もBJも取り戻すのに苦労するわけですが、ドン・ドラキュラは灰になっても、身体の一部になってもしつこく再生してくるんですよね。傷つきやすい少年・青年も、いつかカッコ悪くもしたたかな中年になり、いちいち傷ついてもいられないというわけでしょうか、
アニキもきっと50年後には、したたかな爺ぃになっているんじゃないかな、
どこか、物語の外で、
その時は、隣に気風が良くって口の悪い婆ぁがいるんでしょう、
『どろろ』は、手塚眞氏自作の怪獣・妖怪図鑑『ババー百鬼』から先生が「四化入道」を着想したエピソードも含めて、私には眞氏の印象が強い作品なんです。
( 手塚先生の本棚には当時「鳥山石燕・図画百鬼夜行」が有り、それに掲載されていた「鉄鼠」も参考に「四化入道」のキャラクターが作られた )
手塚眞氏とお父さん「手塚治虫」の『どろろ』に纏わるエピソードは、
【 虫ん坊:手塚マンガあの日あの時・第27回:妖怪ブームの荒波に挑んだ『どろろ』の挑戦 ‼ 】に詳しく掲載されておりますので是非。
【 秋田書店・秋田文庫「どろろ」3巻・解説「正統的な妖怪漫画」手塚眞 】
「ところで僕も自他ともに認める妖怪好きなのですが、これが父親の漫画のせいなのか、それとも息子の妖怪好きが父親に妖怪漫画を描かせたのか、今となっては分かりません。しかし、僕はわずかにこの漫画に貢献したようです。そのひとつは「どろろ」という題名。幼かった僕が「泥棒」のことを舌足らずに「どろろお」と呼んだのを父親はヒントにしたとか。これは、記憶に定かではないので真偽のほどは分かりません」
【 虫ん坊:手塚マンガあの日あの時・第27回 】
「『どろろ』について、家族の間でいまだに謎なのが「どろろ」の語源についてなんです。父はこれを「ぼくの子どもが、どろぼうのことを片言で “ どろろう ” といったことからできた」と書いているんですが、実際にそれを誰が言ったのかが分からないんですよ。ぼくが言ったのなら父は「子どもが」とは書かずに「息子が」って書くと思うんです。じゃあ親戚の子どもかっていうと、それも思い当たるような年齢の子はいないんです …」
と、タイトルの謎は、やはり謎のままの様子です。