『どろろ』を巡る冒険或いは私的備忘録

「どろろ」を中心に「手塚作品」の記事を掲載。カテゴリーは【書籍・舞台・表現規制・どろろのあゆみ・どろろに影響を受けた作品・「神話の法則の三幕構成」で解析する「どろろ」・ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・ジャングル大帝、黒人差別抗議事件】

【百鬼丸という子ども・②】

 

 真面目に当ブログをご覧になっている方からお叱りを受けそうなネタでございますが、

 

 昔からある『どろろ』の謎に「百鬼丸は魔物に身体四十八箇所を奪われているが、股間は大丈夫であったのか?」という、「アニキの股間問題」があります。

 私が現役のちびっこだった時も、友人間でその疑義が持ち上がりました。

 当時、仲の良かったNちゃんに『どろろ』全四巻を貸した後、Nちゃんは返却時に「アニキ、体のあちこち取られているけど、〇んちん大丈夫だったんかなあ」と、大変素直に子供らしい感想を述べて下さり、ひとしきり友人間で、その話題が協議されました。

 意見は割れて紛糾し、

「さすがに妖怪も股間は持っていかないのではないか?」

股間も持っていかないと四十八箇所にならないのではないか?」

 この様に、意見は真っ二つだったのですが、最終的に、

「寿海さんが男子だと判断したのだから股間はあったのだろう」

 に落ち着きました。

 

 この謎は、連載中の手塚先生に伺わないと結論は出ないだろうな、と思うので、永遠の謎ですが、

 

『小説・どろろ』 鳥海尽三:著 表紙切り絵:百鬼丸 ( 渡辺文昭 ) 発行:学習研究社 

2001年7月「百鬼丸誕生」9月「妖刀乱舞」11月「崩壊大魔城」と全3巻で刊行

《それだけではない、頭部はそのままだが、耳と鼻がない。ただ小さな穴が開いているだけである。両眼は閉じられているが窪みになっていた。眼球も無い。腹部には切り取られた臍の緒が垂れ、股間に当たる部分の生殖器だけが男の赤子であることを物語っている》

 と、鳥海版『小説・どろろ』では、「とられなかった」ことになっています。

 

どろろ』 NAKA雅MURA:著 発行:朝日新聞社 2006年12月

2007年1月公開の実写映画脚本を担当した “ NAKA雅MURA ” 氏による映画のノベライズ、上下巻が同時刊行

 こちらでは、五体目の魔物『ぱっくりモチ爺い』を倒した後に、百鬼丸が取り戻した男性器を自分で確認するシーンが有り、「とられた」設定になっています。

 

 舞台・ゲーム版では、どちらも股間を取り戻すシーンは無いので、映画ノベライズ版が唯一、「とられていた」設定を採用したリメイク作品でしょうか、映画版の寿海さんは「呪医師」なので、外性器で判別しなくても性別が判ったのかもしれません。

 

 また、この「謎」から派生して、

「身体の部位が全部戻ってきたら“アネキ”という展開もあるのではないか?」

というネタもありました。

 

どろろ梵』

ヤングチャンピオンコミックス:全四巻 道家大輔

ヤングチャンピオン秋田書店」2007年12号~09年5号まで、全38話連載

 こちらでは、現代日本百鬼丸が「女性」として転生するのですが、転生前は男性なので、少し違うかな、

 

「アニキは男性か女性か?」 

 原作で男性として描かれているので、この「問い」は蛇足だとは思いますが、

 

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 原作の、このシーンの着物横の小さい線は臍だと思います。

 んで、絵をお描きになる方がお詳しいと思いますが、このシーンのアニキの臍は男性の臍の位置です。臍の位置は内臓とも関係が有るので、アニキは「男子」ですね、

 また、創作物でアレコレいうのも野暮天ですが、当時の医療事情を考えると性別の判定は外性器の状態で判別するしかないでしょうから、鳥海版のように「股間」は取られずに済んだというのが落としどころですかね、

 

 まぁ、「股間」担当になった妖怪も嫌だろうし、

 でも、河童みたいに「尻子玉大好き」とかいう妖怪さんもいるしなぁ …