“ ネタバレ” 気にせず書いているので御注意ください。
これまた、映画『シン・仮面ライダー』を観ていないとさっぱり? な内容になっております。
観ていてもさっぱりとも思うんですが …
困ったお兄ちゃんの話です。
【 緑川 イチロー(みどりかわ イチロー) / 仮面ライダー第0号・チョウオーグ 】
緑川弘博士の息子で、ルリ子の兄、無差別殺傷事件で母親を亡くした。
事件後、世界に絶望し、父とともに「ショッカー」に所属、後に改造される。自らの理想とする争いのない「ハビタット世界」の実現を求めている。仮面ライダー第0号・チョウオーグとして高い戦闘力を持つ。
幼いころに無差別殺人犯に母親を殺害された事件をきっかけとして「暴力の無い世界を作りたい」と強い願望を抱き、自分も含む全ての人類をハビタット世界へと送る「ハビタット計画」を立案した。ハビタット世界はプラーナ=人間の魂のみ存在できる世界で、嘘が無い他者を完全に理解できる世界とされているが、同時に人間が自我を保てない地獄のような世界ともいえる。
… 「他我をいかに認識ないし経験できるのか」という哲学の他我問題が解決しそうな計画ですが、煩悩まみれの身の上から、いきなり解脱させられるの辛いと思うんですが、お兄ちゃん …
そんで、イチローお兄さんの “ チョウオーグ ” は、原作のこの怪人とか、イナズマンかなぁ、と思っていたのですが、
ポスターが発表されて、お兄さん弥勒菩薩 なの ?
と、いろいろリンクして面白かったので、
いつもの理屈と膏薬はどこにでもくっつくでございます。
≪ 弥勒菩薩(みろくぼさつ)、梵: maitreya(マイトレーヤ)、巴: metteyya(メッテイヤ、メッテッヤ)は仏教において、釈迦牟尼仏の次に現われる未来仏であり、大乗仏教では菩薩の一尊である。
弥勒は音写であり、「慈しみ」( 梵: maitrī, 巴: mettā )を語源とするため、慈氏菩薩( “ 慈しみ ” という名の菩薩 )とも意訳する。
また弥勒菩薩( マイトレーヤ )は、名の語源を同じくする事から、ミスラを起源とする説も唱えられている。これによると、弥勒菩薩の救世主的性格はミスラから受け継いだものだという ≫
≪ ミスラ( Mitra )は、イラン神話に登場する英雄神として西アジアからギリシア・ローマに至る広い範囲で崇められた神。インド神話の神ミトラmitraと起源を同じくする、インド・イラン共通時代にまで遡る古い神格である。その名は本来「契約」を意味する ≫
≪ インドのミトラ - インド神話では、契約によって結ばれた「盟友」をも意味し、友情・友愛の守護神とされるようになった。また、インドラ神など他の神格の役割も併せ持った。『リグ・ヴェーダ』ではアディティの産んだ十二柱の太陽神( アーディティヤ神群 )の一柱で、毎年6月の一カ月間、太陽戦車に乗って天空を駆けるという。また、同じくアーディティヤ神群の一柱であるヴァルナとは表裏一体を成すとされる。この場合、ミトラが契約を祝福し、ヴァルナが契約の履行を監視し、契約に背いた者には罰を与えるという ≫
- Wikipediaより
… で、
ミトラとは、インドのミトラと対応し、後には密儀宗教 ⇒ ミトラ教の主神格として、その崇拝が西ヨーロッパの各地にまで広まったペルシアの神で、元は、インドのミトラ ( ※ リグ・ヴェーダでは契約と友愛の神 ) と同様、契約・友誼・信義などを守護し正義を司る、司法者的性格の最高神で、サンスクリット語では計量者を意味します。
ペルシアにおいても契約の神でしたが、次第に光明神的性格が強くなり、曙光神・太陽神・戦闘神と変化、のちには太陽神と同一視されるようになって、ローマに入りミトラ教の主神となりました。ゾロアスター教の聖典『アベスタ』には、棍棒を武器にして悪魔を退治する勇猛な戦神として登場しています。
※『リグ・ベーダ』ではミトラに捧げられた独立賛歌は一編のみで、それによれば、彼は恩恵に富み、困厄から人間を救い、広大にして威力があり、まばたきすることなく人間を監視する。彼はまた人々を合意、一致に導く。人間は固くミトラの掟を守り、その好意と友情とに安住することを念願した。
【 慈 悲 】
仏教用語。 原語はどちらか一つの場合も両方の場合もある。「慈」「悲」とは同格であり、2語間には多少の意味上の相違がある。「慈」はサンスクリット語で、maitrī ( マイトリー ) を原語とし、これはmitra (ミトラ ) から派生した抽象名詞で、あらゆる人に平等に注がれる最高の友情、友愛という意味。「悲」はあわれみ、同情の意でkarunā ( カルナー ) を原語とし、嘆きを原義とする。他人の嘆きと同化し、みずからも嘆きをともにするとき、他人に対する最も深い理解が生じると説く、仏教の根本的倫理観念の一つ。
- と、弥勒菩薩・マイトレーヤ ( ミトラ ) の周辺を列挙してみるといろいろ面白いですね。 契約と友愛の神から戦闘神への変化とか、釈迦牟尼仏の次に仏になると約束された菩薩で、釈尊の入滅後56億7千万年後の未来にこの世界に現われ悟りを開き、人々を救済する未来仏。
とか、“ ハビタット計画 ” っぽいですし、
んで、
もう一つ気になるのは
【 常世神 】
『日本書紀』によると、皇極天皇3年 ( 644年 )7月に、東国、富士川の辺の人・大生部多 ( おおふべのおお ) が村人に虫を常世神として祀ることを勧め、巫覡(かんなぎ)等も神託があったと説き「富を捨てて、常世神を祀れば、さらなる富と長寿を得る」と触れ回った。
人々は「常世虫」を清座に祀り財産を棄捨し、歌い舞って常世神のもたらす福を求めた。信仰は都でも流行り、山城国の豪族・秦造河勝 ( はたのみやつこかわかつ ) が、大生部多を討伐した、当時の新興宗教、あるいは宗教的民衆運動。
この宗教で祀られていた「常世虫」は『日本書紀』に「この虫は、常に橘の樹に生る。あるいは山椒に生る。長さは4寸余り、親指ぐらいの大きさである。その色は緑で黒点がある。形は全く蚕に似る」と記されていて、現在のアゲハチョウの幼虫ではないかと考えられている。
「チョウ」オーグは偽神と ( 強引に ) 解釈できたり ? …
多くの衆生を救済する「弥勒菩薩・慈氏菩薩 ( “ 慈しみ ” という名の菩薩 )」は偽り、兜率天じゃなくて衆生は地獄 ( ハビタット世界 ) 行き、
まぁ、解脱したくないのに、いきなり涅槃に転移させられてもみんな困るというか、その準備ができていない煩悩まみれの人が「ハビタット世界」に行ってもダメじゃん? って、思うんですけども … 精神のみでつながっても、気の合うもの同士コロニー作ると思うんですよね、向こうで、 そんで、現世よりもぼっちな人が浮き彫りになる地獄絵図になったりしないのかなぁ、
知らんけど …
全人類を自分の思うがままにしたい「ハビタット世界」に送りたい、人類の自我 ( ego ) を消そうとしたお兄ちゃんが一番自我強い、この矛盾。
偽りの神になろうとした男を、ルリ子さんとWライダーが「友愛」でぶん殴りに行くのが熱い展開で、ラストは自我と自我のぶつかり合いだから子供の喧嘩、肉弾戦にならざる終えないのも已んぬる哉。
ポスターは「衆生を救済しようとした/仮面ライダー第0号」で “ 弥勒菩薩 ” のポーズ以上の意味は無いと思いますが、映画を観ているときに “ チョウオーグ ” ⇒「チョウチョ = 常世虫」と連想して “ ハビタット世界 ” は「常世」とか「浄土」の暗喩? と、思ったので、この有様でございます。庵野監督、諸星大二郎ファンだそうですし …
【 緑川 イチロー ・チョウオーグ 】は森山未來氏の出演した舞台『髑髏城の七人』の天魔王をイメージしていて、森山氏も天魔王のように静かで淡々とした口調で演じているということで、『シン・仮面ライダー』鑑賞時の「どこかでみたような …」という既視感の正体はこれかと思ったんですけれど、もう一つ「これは?」と思ったのが「赤いマフラー」をルリ子さんからもらうシーンで、偶然だと思うんですが北村想氏の『最後の淋しい猫』、アリスから赤いマフラーを貰うロクちゃん …
演出・美術含めて、どこか「舞台演劇」っぽさのある映画でしたね。
“ 常世神 ” が気になった方、伝奇ものが好きで呪術に興味がある方には、中島らも先生の『カダラの豚』を、おススメしておきます、ふふふ …