「どろろ」を巡る冒険或いは私的備忘録

「どろろ」の記事を掲載しています。ほぼ、それだけなので、「たわし」しかない雑貨屋状態です。挙句の果てに新アニメの記事は殆どありません。「たわし」といっても亀の子しか置いてないんです、すみません状態です。書いてる本人も如何なものか… と思ってるので、どうか御容赦下さい。

「血だるま剣法・平田弘史」

血だるま剣法」 

 1962年7月に「日の丸文庫」の貸本誌『魔像』別冊として刊行された。

 部落解放同盟の厳しい抗議を受けて回収・絶版となった伝説の作品。

【あらすじ】

 主人公の猪子玄之助には、「領内に部落があっては恥をかく」という藩主の命で家族を惨殺された過去があり、その為、いつか剣術で身を起こし、部落制度廃止を将軍に上訴したいという悲願があった。そして、剣技の上達に対する異常な執着心から道場でも浮いた存在となっていく。その後、玄之助の出自が兄弟子たちの知る所となり、もとより疎まれていた玄之助への風当たりはますます強くなる。そして師匠の一伝斎も玄之助の悲願を成就せぬものと考え、万一の場合は自身が玄之助を斬る覚悟を固めていた。偶然、師匠の考えを知ることとなった玄之助は激怒し、師匠の一伝斎を殺害、壁に復讐を誓った血文字を残して道場を去り、兄弟子たちへの血みどろの復讐劇が始まる。

血だるま剣法」は1962年7月に日の丸文庫の貸本誌『魔像』別冊として刊行されたが、部落解放同盟の抗議を受けて刊行より1ケ月で回収・絶版となった。その6年後には『コミックマガジン・1968年1月6日号:芳文社』にリメイク版「おのれらに告ぐ」が掲載される。この作品は、「血だるま剣法」のストーリーをなぞっているが、主人公は流刑人の子孫と設定が変更された。そのため当初の悲願は成立しない事となる。

 同作品は、2004年に呉智英氏監修のもと「青林工藝舎」から42年ぶりに復刻。また、「ラピュータ」からも2012年に「復讐つんではくずし」と合わせて復刻本が刊行。

 『ぼくは劇画の仕掛人だった:エイプリル出版』には、「部落解放同盟の強硬な抗議を受けて、異様な活力を有する社長も、さすがに困却してノイローゼになる。涙をのんで担当編集者の首を切り、全国の貸本店から同書を回収して、解放同盟の人たちの目の前で焼却処分にしたのである」と、あるが、2009年6月5日付『読売新聞』では、作者の平田弘史氏が、「オレは『差別のない社会にしなければいけない』という思いで描いたんだ。回収はごく一部だけで、焼いた事実もなかったよ」と、語っている。また、Wikipediaによれば、「表向きには完全に処分されたと思われた『血だるま剣法』だったが、実際には回収・廃棄処分は徹底して行われてはいなかったようで日の丸文庫の倉庫に大量に保管されていたという」「同社に入社した山松ゆうきち山上たつひこがそれを発見しており、山上にいたっては自作にてこの血だるま剣法をパロディにしている。また売れ残り品が古本屋や露店でひそかに売られていた可能性もあるという」と、回収・廃棄は徹底されていなかった様子。

 

 1962年8月、部落解放同盟大阪府連から「差別と偏見を助長する」として日の丸文庫に本作の抗議が寄せられた。

 部落解放同盟大阪府連が問題としたのは以下の三点、

①.作品に記述されている部落の起源が科学的歴史観に反した偏見で書かれている。

②.部落民を残酷な人々と描くことで部落解放運動をゆがめている。

③.最後に主人公を死なせ、それを笑うことで部落の人が死に絶えればいいと思わせてる。

 ①に関しては本作の部落に関する記述に誤りがあり、後年復刻されたものでは伏字処理がされているが、②・③に関しては読者それぞれの感想・解釈で意見の分かれる部分で的を得た批判とは言い難いのでは無いだろうか、

 また、『赤旗』(1963年5月26日)は「子どもマンガの“人づくり”」記事内で『忍者武芸帳白土三平著』とともに本作を取り上げ、「『部落出身』の主人公が剣の師や兄弟でしたちに『エタ』と軽べつされたのを怒って、師を殺し、たくさんの同輩の両腕を切り落とし、自分もついにダルマのように両手両足のない不具者になってしまうのですが、それでもなお復讐をあきらめず……」と、その残虐描写を指摘し、危惧している。

 

 

 差別を助長すると批判を受け、40年以上絶版となっていた本作の描写は残酷で衝撃的ですが、作者の平田弘史氏が語っておられるように、「差別に対する怒り・激しい憤り」という重いテーマで描かれた評価の高い作品です。本作が抗議の後に、何の議論もされることなく廃棄・封印されることになった背景には、1962年当時、戦後人権意識の高まりとともにそれらの運動が激化していた事や、「悪書追放運動」「都青少年条例制定」を経て、貸本、劇画、マンガ、が悪書として白眼視されていた時代背景が大きく影響していたのだと思います。その後、現在に至るまで、抗議を受けた書籍が何の議論も無く回収・絶版されてしまう事件は、引きを切りませんが、最近では注釈をつけて、そのまま復刻されるケースも増えており、これは、「作品の芸術性」「表現の自由」など多様性に配慮をした結果なのでしょう。

 

※画像検索して頂ければアレなのですが、本作品の主人公は「四肢を欠損し、両腕に刀を付けている剣士」で、昔から「百鬼丸」の元ネタじゃないかと言う噂がありました。性格などキャラクター造型は全然違うのですが、