『どろろ』を巡る冒険或いは私的備忘録

「どろろ」を中心に「手塚作品」の記事を掲載。カテゴリーは【書籍・舞台・表現規制・どろろのあゆみ・どろろに影響を受けた作品・「神話の法則の三幕構成」で解析する「どろろ」・ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・ジャングル大帝、黒人差別抗議事件】

カテゴリー・表現規制

【 マンガの中の障害者たち -表現と人権- 】 永井哲著 解放出版

【 マンガの中の障害者たち -表現と人権- 】 永井哲著 解放出版 1998年7月2日発行 マンガの中にいろいろな形で登場する “ 障碍者 ” その描かれ方を点検・分析しながら紹介した一冊。《 間違った内容を間違ったまま覚えてほしくない、本当のところも知ってほ…

ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・⑤ 雑感まとめ

-どのように問いを立て、考えるのか? 【 マンガ環境・現代風俗’93 発行:リブロポート マンガと差別 灘本昌久 】 《 青い芝の会の人たちが指摘する第二の点、すなわち手塚が「障害者を健全者に同化すべき者として描」いたということが、問題の指摘としては…

ジャングル大帝、黒人差別抗議事件・⑤ 雑感まとめ

今回、『ジャングル大帝』黒人差別表現問題について調べていたので、『ちびくろサンボ』絶版についての記事も多く拝見しました。黒人差別表現問題といえば『ちびくろサンボ』というぐらい、当初問題になったサンリオのキャラクター「サンボ&ハンナ」やヤマト…

ジャングル大帝、黒人差別抗議事件・④

【『ジャングル大帝』は黒人差別だったのか?】 この一連の「黒人差別表現抗議事件」当時に、 【 がちゃぼい一代記 】※の一場面を取り上げ、手塚氏も黒人に対する差別意識を持っていた、と手塚プロダクションに抗議する人もいたそうですが、【 誌外戦 】で松…

ジャングル大帝、黒人差別抗議事件・③

こうして、一年間出荷停止となっていた講談社の『手塚治虫漫画全集』も “ 読者の皆様へ ” と解説文をつけて、1992年3月から出荷再開となり、他の出版社もその流れに追随する形で解説文・注釈をつけて出荷を再開した。多くの手塚漫画が絶版になる危機は回避さ…

ジャングル大帝、黒人差別抗議事件・②

【 封印作品の闇 -悲しい熱帯・ジャングル黒べえー 著者:安藤健二 】で、当時「黒人差別をなくす会」の抗議を受けて、講談社・手塚プロダクションが、どのような対応をしていたのか? 詳細に語られていたのでご紹介します。 《 元講談社法務部長・西尾秀和…

ジャングル大帝、黒人差別抗議事件・①

【 抗議事件までの経緯 】 1988年8月、関西在住の有田氏とその家族が「黒人差別をなくす会」を結成。一般に販売されている黒人のキャラクターグッズ・人形が「①まん丸で大きな目で、②大きく厚く誇張された唇、③ずんぐりと太った体型」に表現されており、黒人…

ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・④

【 封印作品の謎 -禁じられたオペ- 著者:安藤健二 】より、 《 手塚プロダクション:松谷孝征社長、インタビュー 》 ― 二作品が未収録となっている理由はなんでしょうか? 「生前、手塚治虫は単行本収録作品は自分で選んでいました。ですから、残った作品が…

ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・③

抗議記事が朝日新聞に掲載された約3週間後の1977年2月10日に、手塚プロダクション・秋田書店、連名での謝罪文が大手各新聞誌に掲載された。 《 おわび:秋田書店発行の週刊少年チャンピオン( 一月一日号 )に掲載された、手塚治虫作『ブラック・ジャック』…

ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・②

《 抗議事件に至るまでの背景 》 【 ロボトミー手術とは ? 】 統合失調症など精神疾患の治療に用いた外科的手技の一種。脳の前頭葉白質の一部を切除して神経経路を切断する外科手術、前頭葉白質切截術。統合失調症・双極性障害をはじめとする精神疾患をもつ…

ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・①

【 手塚マンガにクレーム「ロボトミーを美化」・朝日新聞・1977年1月17日付夕刊 】 《 少年マンガの第一人者といわれ、医学博士でもある手塚治虫氏の医学SFマンガが、障害者団体や支援グループから厳しい批判を受けている。問題になっているのは週刊マンガ雑…

悪書追放運動 その10 【雑感まとめ】

「悪書追放運動」とは? Wikipedia、「悪書追放運動」より、 《 悪書追放運動 ( あくしょついほううんどう ) とは、ある書籍や文書を「悪書」と定義し排除しようとする運動である。 権力者による言論弾圧の一環として行われる他、言論と表現の自由が保障され…

悪書追放運動 その9

【 悪書追放運動:時系列まとめ 戦後~1970年代 】 戦後の民主化によって、戦前・戦中の出版法や治安維持法などの言論統制による図書検閲は無くなり、大衆娯楽に自由化の波が押し寄せた。当時、娯楽に飢えていた人々は、雑誌・映画などの大衆娯楽を歓迎した…

悪書追放運動 その8

【手塚治虫、斯く闘えり】 『ガラスの地球を救え』 著:手塚治虫 発行:光文社 「思えば、『鉄腕アトム』を描きはじめた昭和二十六、七年ころは、ものすごい批判が教育者や父母から集中し、「日本に高速列車や高速道路なんて造れるはずがない」とか、「ロボ…

悪書追放運動 その7 【やけっぱちのマリア】

【 講談社・手塚治虫漫画全集『やけっぱちのマリア』あとがき 】 「やけっぱちのマリア」は、まあ、いわばキワモノです。ちょうど、この当時子どもの性教育の見なおしが叫ばれ、「アポロの歌」の解説でもかきましたが、少年誌に大胆な性描写やはだかが載りは…

「血だるま剣法・平田弘史」

『 血だるま剣法 』 1962年7月に「日の丸文庫」の貸本誌『魔像』別冊として刊行された。 部落解放同盟の厳しい抗議を受けて回収・絶版となった伝説の作品。 【 あらすじ 】 主人公の猪子玄之助には「領内に部落があっては恥をかく」という藩主の命で家族を惨…

悪書追放運動 その6 【貸本劇画の衰退】

戦後、雨後の筍の様に増えた「貸本屋」の全盛期は1955年から58・9年頃の3~4年間と言われている。まだ高度成長期の入り口で、戦後の傷跡があちこちに残っていた時代で、当然、公共図書館も整備されておらず、テレビも普及していなかった。戦後の赤本マンガ…

悪書追放運動 その5 【アシュラ】

1970年代には、『アシュラ』『キッカイくん』『切り裂く!』『ハレンチ学園』『やけっぱちのマリア』『アポロの歌』など多くのマンガが全国各地で有害指定され、青少年への販売が禁止された。特に性描写では前回紹介した『ハレンチ学園』が、残酷描写では『…

悪書追放運動 その4 【 ハレンチ学園 】

前回までのまとめで1950年前後から1960年代後半までの「悪書追放運動」の動きを追ってきたが、ここで少し戻って1950年代末「少年漫画誌」の振り返りから始めたい。 1950年代後半は「週刊誌」の創刊が続いた時期で、1956年『週刊新潮』が日本初の週刊誌として…

悪書追放運動 その3

【東京都青少年条例制定をめぐる動き ( 1960年代~ )】 1963年10月、台東区中学校PTA連合会から東京都議会に「少年の目に映る、誇張された性的、犯罪的社会悪を助長するような映画、その他娯楽施設の悪どい宣伝文、看板等が公然と社会の中に、ほうり出されて…

悪書追放運動 その2

『悪書追放運動』は表現規制に向けて民間団体が主導した様に見える運動であるが、常に政府も動いており、総理府の付属機関『中央青少年問題協議会 ( 中青協 )』は1954年7月に『青少年に有害な出版物映画対策専門委員会』を設置している。これには、朝日新聞…

悪書追放運動 その1

戦前・戦中は出版法・治安維持法などの言論統制・図書検閲があり、出版・表現は厳しく規制されていた。 その後、占領下の1945年9月から1949年10月までGHQによって出版物が検閲され、軍国主義的なもの、封建主義思想の賛美などの内容が対象となり、児童絵本・…

表現規制と都市伝説

※怪談注意 冬の北海道で踏切事故が発生、はねられた女子高生は上半身と下半身が完全に切断されたが、寒さの為に切断部分の血管が収縮し数分間生存していた。上半身は下半身を探して息絶えたという。この話を聞いた人のところには三日以内に下半身の無い女性…

どろろのあゆみ【10】表現規制とオタクバッシング

1988 ~ 89年に起きた「連続幼女誘拐殺人事件」犯人逮捕により、一連の報道は過熱。マスコミは特異な事件として連日報道、マンガ・アニメなどのメディアが犯罪の誘因と視聴者に印象を与えかねないフレームアップも有って、その影響は今も続いています。 この…

「どろろ」に影響を受けた作品  第四回  『ベルセルク』

【 あらすじ 】 母は虐殺され、その遺体が吊るされた木の下で主人公 “ ガッツ ” は生まれる。 母の遺体の下で産声を上げていた “ ガッツ ” は、傭兵部隊の隊長ガンビーノに拾われ成長。彼を可愛がってくれた義母は病で死に、信頼していた義父に裏切られ、彼…