『どろろ』を巡る冒険或いは私的備忘録

「どろろ」を中心に「手塚作品」の記事を掲載。カテゴリーは【書籍・舞台・表現規制・どろろのあゆみ・どろろに影響を受けた作品・「神話の法則の三幕構成」で解析する「どろろ」・ブラック・ジャック、ロボトミー抗議事件・ジャングル大帝、黒人差別抗議事件】

どろろのあゆみ【12】1990年代~

1991年のバブル崩壊後、株価・不動産価格の下落により金融機関に多額の不良債権が発生。これにより、過剰な企業融資の見直しが行われ、金融機関の「貸し渋り・貸し剥がし」と言われる行為が横行、企業の大量倒産を招く結果となりました。 この負のスパイラル…

どろろのあゆみ【11】どろろとサイバーパンク

1970年代には米ソ・デタントにより一時東西冷戦の緩和が見られましたが、80年代に入り、ソ連のアフガニスタン侵攻により状況は激化。しかし東欧諸国の革命により社会主義勢力の衰退と言う形で冷戦は終結に向かい、1991年ソ連の崩壊により幕を閉じます。 しか…

どろろのあゆみ【10】表現規制とオタクバッシング

1988 ~ 89年に起きた「連続幼女誘拐殺人事件」犯人逮捕により、一連の報道は過熱。マスコミは特異な事件として連日報道、マンガ・アニメなどのメディアが犯罪の誘因と視聴者に印象を与えかねないフレームアップも有って、その影響は今も続いています。 この…

どろろのあゆみ【9】

1970年代、第二次世界大戦後の経済成長がオイルショックにより終わりを迎え、米ソ冷戦も緊張緩和を見せる中、1973年には泥沼のベトナム戦争が終了します。これによりアメリカの軍事力の限界が露呈、ニクソンショックによりドル支配にも陰りが見えはじめます…

「どろろ」に影響を受けた作品  第四回  『ベルセルク』

【 あらすじ 】 母は虐殺され、その遺体が吊るされた木の下で主人公 “ ガッツ ” は生まれる。 母の遺体の下で産声を上げていた “ ガッツ ” は、傭兵部隊の隊長ガンビーノに拾われ成長。彼を可愛がってくれた義母は病で死に、信頼していた義父に裏切られ、彼…

「どろろ」に影響を受けた作品  『第三回 KID-鬼童ー』

【 藤原カムイ作品集・クリップ 】平成2年9月16日発行 株式会社スコラ に収録。「スピリッツ」に連載されていたが「スピリッツ」が隔週から週刊化後に「FOR・YOUNG」へ移動。しかし再開後「FOR・YOUNG」が2号で廃刊、そのまま途中で連載終了となる。 【 あ…

「どろろ」に影響を受けた作品 第二回 魍魎戦記MADARAシリーズ

【 魍魎戦記MADARAシリーズ 】 1989年8月30日:角川書店発行 著者:田島昭宇・大塚英志 光と闇の宿業を背負って生まれた2人の少年、摩陀羅( マダラ )と影王( カゲオウ )を軸に展開する転生譚。 主人公マダラが強大な力を持って生まれた為、父であ…

どろろのあゆみ【8】虫プロ斗争ニュースから

『どろろ』制作・放映時期の前後は「虫プロダクション」と言う制作会社の疾風怒濤の時代で、この倒産前後の騒動も旧アニメ『どろろ』が幻作品となった一因なのでは?と思いましたので、考察も交えて記事を纏めてみました。 【 虫プロ斗争ニュース・抜粋 】 …

どろろのあゆみ【7】

昭和50~60年代にかけて『どろろ』に関して流布されている風説が幾つかあり、当時から気になっていたので、私見になりますが、推理・考察も含めてご紹介したいと思います。 「 “ どろろ ” は不人気の為、打ち切られた」「封印作品であった」原作マンガ・旧ア…

どろろのあゆみ【6】どろろ関連商品など

『どろろ』旧アニメ放送時の昭和44年 ( 1969 ) から関連商品のマーケット展開は活発だった様子で、多くのキャラクター商品が販売されています。 ビニールパス・自由帳・スケッチブック 画像の商品以外にも 通園バック ・お弁当箱・水筒など園児を対象とした…

どろろのあゆみ【5】アニメ誌に掲載された『どろろ』

【 ランデヴー・月刊OUT増刊 昭和53年 ( 1978 ) 3月7日 】「甦る!虫プロ名画、どろろ」として『どろろ』が特集されています。・ランデヴーメモリアルグラフィとしてカラーページあり、・どろろ思い出の名作劇場「最後の妖怪」( このコーナーの前書きに《…

どろろのあゆみ【4】FC活動など

虫プロダクション設立後、毎週30分の「テレビマンガ」がゴールデンタイムに放映されるという世界でも類を見ない状況が日本に生まれました。 そして「漫画・テレビマンガ」を身近に感じながら成長した戦後漫画世代を意識して1960年代後半から始まった、ハイテ…

どろろのあゆみ【3】 虫プロの終焉

虫プロの終焉と、その周辺 1961年 ( 昭和36年 ) 6月に手塚治虫プロダクション動画部としてスタッフ四人で始動。その後1962年 ( 昭和37年 ) 1月に「株式会社虫プロダクション」として正式に発足。最盛期には500名以上のスタッフを擁し、日本で最初のテレビア…

どろろのあゆみ番外編 TVガイド・子供番組大特集 昭和四十四年五月二・九日合併号

『どろろ』放映時のTVガイド ( 当時のお値段一冊80円 ) に、【 幼児むけ番組がガタ減りした理由、スポンサーに嫌われる子供のファン 】 という記事が掲載されており、興味深かったので内容を纏めてみます。 昭和44年5月2・9日合併号の記事によると、 子供…

どろろのあゆみ【2】「どろろ」旧アニメ、1969年4月~放映開始

『どろろ』旧アニメは、出崎哲氏が杉井ギザブロー監督に「面白い、これアニメになりませんか」と原作を勧めた事がきっかけで、虫プロに企画が提出され、1967年に企画スタートとなりました。 その後はパイロットフィルム完成が1968年1月29日、テレビシリーズ…

どろろのあゆみ【1】補足・当時の記事から

昭和43年8月13日の東京中日新聞に掲載された記事、『どろろ』が「子供向け、陽気な妖怪もの」として紹介されています。 記事内では、絵の左が主人公と紹介されており、 虫プロの企画書でも、・誰もの興味をひく「奇怪な物語」「手」もなく「足」もなく「耳」…

どろろのあゆみ【1】

『どろろ』の歴史?を、私の手元にある資料や文献から考察も交えて紐解いてようと思います。 ー 定点観測も観測者と観測地点が変化すれば記録は変化する。私という観測者からの報告を楽しんで頂ければ幸いです。 週刊少年サンデーで『どろろ』が執筆開始とな…

『どろろ』に影響を受けた作品 第一回『NIGHT HEAD』

『どろろ』に影響を受けた作品を紹介していきたいと思います。 第一回は、 『NIGHT HEAD』 「ナイト・ヘッド」 -それは、人間が使用していないとされている脳の容量である70パーセントの部分を指す言葉である。人間が持つ不思議な「力」は、この70パーセン…

劇団☆新感線「どろろ」 から、とりとめもなく… 

前回の「劇団☆新感線」からリンクして「中島かずき」先生つながりで、「天元突破グレンラガン」です。 この作品の元ネタは山田正紀先生の「宝石泥棒」「螺旋の月」です。 未読で興味のある方にはオススメです。 好みが分かれる作品だと思いますが、ヒロイッ…

劇団☆新感線『どろろ』

劇団☆新感線の公演で『どろろ』を見たことがあります。 と言っても演目が『どろろ』だったワケではなく、 新感線の「おまけ」で拝見したのです。 たしか…… 公演は1993年の『てるみ&うぐいす』で、 上演後の「おまけ」として、古田新太さん ( 当時は細くて恰…

人形劇団「ひとみ座」70周年記念公演『どろろ』

人形劇団「ひとみ座」70周年記念公演『どろろ』 真っ直ぐな熱い少年漫画を感じさせる舞台。 1948年発足、代表作は『ひょっこりひょうたん島』 子供を対象にした作品やシェイクスピア作品など幅広い作品を上演し、伝統人形の研究と継承を活動の柱としている老…

劇団扉座 新浄瑠璃『百鬼丸』

劇団扉座 新浄瑠璃『百鬼丸』 手塚治虫原作『どろろ』のストーリーを「百鬼丸」のストーリーライン一つにまとめた本作は「呪われた子供の再生」という主題に焦点を当てて翻案されており、毒親育ちの子供ならこの舞台はいろいろと腑に落ちる点も多いのではな…

SF・Japan冬季号 「手塚治虫スペシャル」

徳間書店 2002年 SF・Japan冬季号 「手塚治虫スペシャル」 「神話の法則」の三幕構成で解析する「どろろ」を書くために、本棚や段ボール箱をごそごそひっくり返しておりましたら、SF・Japan「手塚治虫スペシャル」が出てまいりました。 PS2ゲーム「どろろ」…

「神話の法則の三幕構成」で解析する『どろろ』 あとがき

『どろろ』という物語は不思議な物語です、50年の時を経ても、多くの人を魅了して止まない。 《 妖怪に奪われた生身の体を一つ一つ取り戻す、という「どろろ」のストーリーの骨子を流用してファミコン漫画のシナリオを書いたら単行本が250万部も売れた。( 中…

「神話の法則の三幕構成」で解析する『どろろ』 其の三「どろろ」蛇足編

大塚英志氏が名付けた “ アトムの命題 ” という呪いがあります。 成長しない体を持つ「アトム」と言うキャラクターが持つ「呪縛」です。( アトムは天馬博士の亡くなった息子の代わりに作られたロボットなのですが、アトムが成長しないと怒った博士に疎まれ、…

「神話の法則の三幕構成」で解析する『どろろ』 其の二 「どろろ」編

其の二 「どろろ」編 ① 日常の世界 もう一人の主人公「どろろ」は野盗「火袋」、その妻「お自夜」の子として、すくすく育ちます。しかし、彼女がまだ赤ん坊の時に、父の部下イタチの裏切りにより、火袋は野盗の頭の座を追われ、親子で放浪することになります…

「神話の法則の三幕構成」で解析する『どろろ』 其の一「百鬼丸」編

脚本術で有名な「神話の法則の三幕構成」を使って『どろろ』を解析してみようと思います。『どろろ』には手塚先生の正典 ( と、書くと何やらシャーロキアンぽいですね ) と、その後、多く書かれ作られた外典が存在します。その正典もサンデー版・冒険王版が…